2026.09.18

コラム第58回 成年後見制度が大きく変わります!成立した改正法で何が変わる?

「成年後見制度が変わるらしいけれど、何が変わるの?」
そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2026年6月17日、成年後見制度の大幅な見直しを含む「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。今回の改正は、現在の「後見・保佐・補助」という仕組みを大きく変更するものです。
そこでこの記事では、成年後見制度がなぜ見直されることになったのか、そして私たちの生活にどのような影響があるのかを、できるだけ分かりやすく解説します。

⑴そもそも、なぜ成年後見制度が改正されるの?
 現在の法定後見制度には、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があります。
たとえば認知症などによって判断能力が低下し、自分で財産を管理したり契約を結んだりすることが難しくなった場合、家庭裁判所が選任した成年後見人等が本人を支援します。
本人の財産や権利を守るための大切な制度ですが、一方で「本人に必要な支援の範囲を超えて権限が及ぶ場合がある」「支援の必要がなくなっても制度を終了しにくい」といった課題も指摘されていました。
そこで今回の改正では、本人の自己決定を尊重しながら、必要な範囲で制度を利用できる仕組みへと大きく方向転換することになったのです。

⑵一番大きな変更点は「後見・保佐」の廃止
 今回の改正で特に大きなポイントとなるのが、現在の「後見」と「保佐」という類型が廃止され、「補助」の制度に一元化されることです。
「成年後見制度そのものがなくなるの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
現在のように判断能力の程度によって後見・保佐・補助と分けるのではなく、本人にどのような支援が必要なのかを踏まえて、補助人に必要な権限を付与する仕組みになります。
つまり、「その人に必要な支援を、その人に必要な範囲で」という考え方が、より重視されることになります。

⑶「必要なことだけお願いする」制度へ
 改正後の制度では、本人ができることまで一律に補助人に委ねるのではなく、本人の状況や必要性に応じて支援する範囲を定めていく考え方が、より明確になります。
これは、本人の自己決定を尊重するという意味で大きな変化です。
ただし、「必要なことだけお願いできる制度になる」ということと、「将来の財産管理を自由に設計できる」ということは同じではありません。
成年後見制度は、あくまで本人の判断能力が低下した場合に、その方の権利や財産を保護するための制度です。本人や家族が希望する財産管理の方法を、あらかじめ自由に決めておく制度ではありません。

⑷必要がなくなったら終了できる制度へ
もう一つ注目したいのが、制度を終了する仕組みです。
現行制度では、後見開始後に特定の手続が終わったとしても、本人の判断能力が回復しない限り、原則として後見は終了しません。
改正後は、本人にとって補助による保護が必要でなくなった場合などに、補助開始の審判を取り消すことができる仕組みが設けられます。
「必要性に応じて利用する」という方向に制度が変わることは、大きなポイントといえるでしょう。

⑸成年後見制度が変われば、家族信託は必要なくなる?
 ここは今回の改正を考えるうえで、ぜひ押さえておきたいところです。
「必要な範囲だけ補助してもらえるなら、将来の認知症に備えて家族信託をする必要はなくなるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、成年後見制度と家族信託は、そもそも目的や利用するタイミングが異なります。
成年後見制度は、判断能力が低下した本人を保護・支援するための制度です。これに対して家族信託は、本人に判断能力があるうちに、将来の財産管理について家族などに託しておく仕組みです。
たとえば、「将来、自分が認知症になって施設へ入ったら、自宅を売却して施設費用に充ててほしい」と考えている場合、まだ判断能力が十分にある段階であれば、家族信託などを活用して、将来の財産管理についてあらかじめ準備しておくことが考えられます。
一方、何の準備もしないまま判断能力が低下してしまった場合には、その時点から家族信託を組成することが難しくなり、成年後見制度の利用を検討する場面もあります。
つまり、「成年後見制度と家族信託のどちらが優れているか」という話ではありません。
元気なうちに将来へ備える方法と、判断能力が低下した後に本人を支援する制度は、役割が違うのです。

⑹新しい制度はいつから始まる?
 改正法は2026年6月24日に公布されましたが、成年後見制度に関する改正は、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で、政令によって定められる日に施行されます。
つまり、現時点では、まだ新しい制度は始まっていません。
現在は引き続き「後見・保佐・補助」の3類型による現行制度が利用されていますので、「もう後見制度がなくなった」と勘違いしないようにしましょう。

⑺まとめ ~制度が変わっても「元気なうちの準備」は大切です~
 今回の改正によって、成年後見制度は、本人の自己決定を尊重しながら、必要な支援を必要な範囲で利用する制度へと大きく変わります。
一方で、成年後見制度が使いやすくなるからといって、認知症になる前の対策が必要なくなるわけではありません。
家族信託、任意後見、遺言など、それぞれできることや適しているケースは異なります。
特に不動産をお持ちの方は、「認知症になったら考えよう」では、希望する対策を選べなくなっている可能性があります。
大切なのは、成年後見制度か家族信託かを最初から二者択一で考えることではなく、ご本人が元気なうちに「将来、誰に、どの財産を、どのように管理してもらいたいのか」を考えておくことです。
「親が認知症になったら実家はどうなる?」「家族信託をした方がいい?」「任意後見との違いが分からない」など、将来の財産管理について気になることがありましたら、司法書士法人ファミリアまでお気軽にご相談ください。

執筆 司法書士法人ファミリア
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