2026.07.17

コラム第53回「境界標はなぜなくなるのか? ――小さな杭が守っている大切なもの――」

皆さんは、ご自宅の敷地の境界がどこにあるかご存じでしょうか。
「だいたいこの辺だと思う」「ブロック塀があるから分かる」という方は多いかもしれません。しかし、土地の境界を正式に示しているのは、塀やフェンスではなく、「境界標」と呼ばれる標識であることが少なくありません。
境界標とは、土地と土地の境目を示すために設置される目印です。コンクリート杭や金属プレート、金属鋲などさまざまな種類があり、土地の角などに設置されています。
ところが、この境界標は意外と見つからないことがあります。
土地家屋調査士の業務で現地を確認すると、「昔はあったはずなのに見当たらない」「どこにあるか分からない」というケースに出会うことが少なくありません。
では、境界標はなぜなくなってしまうのでしょうか。
最も多いのは、工事によるものです。
建物の建築や解体、駐車場の整備、ブロック塀の設置や交換などの際に、知らないうちに境界標が撤去されたり、埋まってしまったりすることがあります。
また、長い年月の間に土がかぶったり、雑草に覆われたりして見えなくなることもあります。舗装工事によってアスファルトの下に隠れてしまうケースも珍しくありません。
そもそも境界標は、普段の生活の中で意識する機会がほとんどありません。
家を建てるときや土地を購入したときには確認していても、その後何十年も気にすることなく暮らしているうちに、存在そのものを忘れてしまうこともあります。
では、境界標がなくなると何が困るのでしょうか。
普段の生活では特に支障がないかもしれません。しかし、土地を売却するときや相続するとき、建物を建て替えるときなどには、境界を確認する必要が生じることがあります。
その際、境界標が残っていれば比較的スムーズに確認できる場合でも、境界標が見つからないと調査や測量が必要になることがあります。
また、隣地との境界について認識が異なっていた場合には、思わぬトラブルにつながることもあります。
境界標は小さな杭やプレートに過ぎません。しかし、その小さな目印が、自分の土地と隣の土地を明確にし、将来のトラブルを防ぐ役割を担っています。
普段は目立たない存在ですが、不動産にとっては非常に重要なものなのです。
もし機会があれば、ご自宅の周囲を少し見回してみてください。敷地の角や塀の近くに、小さな金属標やコンクリート杭が設置されているかもしれません。
それは単なる目印ではなく、長い年月にわたって土地の境界を示し続けてきた大切な記録です。
土地は世代を超えて受け継がれていく財産です。そして、その土地を正しく受け継いでいくためには、「どこからどこまでが自分の土地なのか」を示す境界が欠かせません。
普段は気に留めることの少ない境界標ですが、その小さな存在が土地の安心を支えていることを、少しだけ思い出していただければ幸いです。


執筆 土地家屋調査士法人ファミリア
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