2026.06.19
コラム第51回「受け継ぐべきか、手放すべきか ――日本人と土地の特別な関係――」
「先祖代々の土地だから。」
土地について話をしていると、この言葉を耳にする機会があります。
では、その土地を今、実際に利用しているかと聞かれると、必ずしもそうではありません。
住む予定もない。
畑として使う予定もない。
売却を考えているわけでもない。
それでも、「手放す」という選択には迷いを感じる――。
土地は不思議な存在です。車や家財道具であれば使わなくなれば処分を考えることもありますが、土地となると話は別です。そこには資産としての価値だけでなく、家族の歴史や思い出、そして「受け継いできたものを守りたい」という気持ちが重なっているからかもしれません。
なぜ私たちは、使う予定のない土地であっても簡単には手放せないのでしょうか。
その理由の一つは、日本人が長い間、「土地は財産であり、家族へ受け継ぐもの」という価値観の中で暮らしてきたからだと思います。
高度経済成長期からバブル期にかけては、「土地は値下がりしない」「持っていれば安心」と考えられていた時代がありました。いわゆる“土地神話”です。当時は、土地を持つこと自体が将来への備えであり、子や孫への贈り物でもありました。
その価値観は今も決して間違いではありません。実際に、土地は大切な資産であり、家族の歴史を受け継ぐ存在でもあります。
しかし一方で、時代は大きく変わりました。
子ども世代は都市部で暮らし、実家へ戻る予定がない。かつて畑として利用されていた土地も、今では使う人がいない。人口減少や高齢化が進む中で、「残したい」という思いはあっても、「どう活用すればいいのか分からない」という土地が増えています。
土地を所有している限り、固定資産税の負担があります。雑草や樹木の管理、近隣への配慮なども必要です。遠方に住んでいる場合には、現地へ足を運ぶこと自体が難しいこともあります。
その結果、利用されないまま放置される土地や、相続を繰り返して所有者が分からなくなってしまった土地が全国的な課題となっています。
近年、相続登記の義務化や相続土地国庫帰属制度が始まった背景にも、こうした問題があります。
これらの制度は、「土地を持ち続けるべきか、手放すべきか」を決めるためのものではありません。むしろ、「土地をきちんと管理し、次の世代へどう引き継いでいくか」を社会全体で考える時代になったことを示しているように感じます。
もちろん、先祖から受け継いだ土地を大切に守ることは素晴らしいことです。
一方で、「先祖代々の土地だから」という理由だけで将来の判断を先送りにしてしまうと、次の世代が困ってしまうこともあります。
土地は、お金だけでは測れない価値を持っています。
そこには家族の思い出があり、先祖から受け継いできた歴史があります。だからこそ、「残すか、手放すか」という単純な二択ではなく、「これからどう向き合うか」を考えることが大切なのではないでしょうか。
使い続けるのも一つの選択です。活用するのも一つの選択です。売却することも、誰かへ引き継ぐことも、場合によっては手放すことも選択肢の一つです。
大切なのは、何となく先送りにするのではなく、その土地の未来を一度考えてみることです。
土地は、過去から受け継いだ財産であると同時に、未来へ託していく財産でもあります。だからこそ今、改めて土地との向き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。
執筆 土地家屋調査士法人ファミリア
ファミリアグループサイトはこちら
土地について話をしていると、この言葉を耳にする機会があります。
では、その土地を今、実際に利用しているかと聞かれると、必ずしもそうではありません。
住む予定もない。
畑として使う予定もない。
売却を考えているわけでもない。
それでも、「手放す」という選択には迷いを感じる――。
土地は不思議な存在です。車や家財道具であれば使わなくなれば処分を考えることもありますが、土地となると話は別です。そこには資産としての価値だけでなく、家族の歴史や思い出、そして「受け継いできたものを守りたい」という気持ちが重なっているからかもしれません。
なぜ私たちは、使う予定のない土地であっても簡単には手放せないのでしょうか。
その理由の一つは、日本人が長い間、「土地は財産であり、家族へ受け継ぐもの」という価値観の中で暮らしてきたからだと思います。
高度経済成長期からバブル期にかけては、「土地は値下がりしない」「持っていれば安心」と考えられていた時代がありました。いわゆる“土地神話”です。当時は、土地を持つこと自体が将来への備えであり、子や孫への贈り物でもありました。
その価値観は今も決して間違いではありません。実際に、土地は大切な資産であり、家族の歴史を受け継ぐ存在でもあります。
しかし一方で、時代は大きく変わりました。
子ども世代は都市部で暮らし、実家へ戻る予定がない。かつて畑として利用されていた土地も、今では使う人がいない。人口減少や高齢化が進む中で、「残したい」という思いはあっても、「どう活用すればいいのか分からない」という土地が増えています。
土地を所有している限り、固定資産税の負担があります。雑草や樹木の管理、近隣への配慮なども必要です。遠方に住んでいる場合には、現地へ足を運ぶこと自体が難しいこともあります。
その結果、利用されないまま放置される土地や、相続を繰り返して所有者が分からなくなってしまった土地が全国的な課題となっています。
近年、相続登記の義務化や相続土地国庫帰属制度が始まった背景にも、こうした問題があります。
これらの制度は、「土地を持ち続けるべきか、手放すべきか」を決めるためのものではありません。むしろ、「土地をきちんと管理し、次の世代へどう引き継いでいくか」を社会全体で考える時代になったことを示しているように感じます。
もちろん、先祖から受け継いだ土地を大切に守ることは素晴らしいことです。
一方で、「先祖代々の土地だから」という理由だけで将来の判断を先送りにしてしまうと、次の世代が困ってしまうこともあります。
土地は、お金だけでは測れない価値を持っています。
そこには家族の思い出があり、先祖から受け継いできた歴史があります。だからこそ、「残すか、手放すか」という単純な二択ではなく、「これからどう向き合うか」を考えることが大切なのではないでしょうか。
使い続けるのも一つの選択です。活用するのも一つの選択です。売却することも、誰かへ引き継ぐことも、場合によっては手放すことも選択肢の一つです。
大切なのは、何となく先送りにするのではなく、その土地の未来を一度考えてみることです。
土地は、過去から受け継いだ財産であると同時に、未来へ託していく財産でもあります。だからこそ今、改めて土地との向き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。
執筆 土地家屋調査士法人ファミリア
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