2026.05.30

コラム第50回「昔の測量図、本当に今も使えますか? ――時代とともに変わる“土地の正確さ”―― 」



「この測量図、昔作ったものだから大丈夫ですよね?」

土地についてご相談を受けていると、こうした言葉を耳にすることがあります。確かに測量図は不動産を考えるうえでとても重要な資料です。しかし実際には、「昔作られた測量図」と「今の土地の状況」が、必ずしも一致しているとは限りません。

もちろん、昔の測量が間違っていたという話ではありません。むしろ、その時代ごとの技術の中で、できる限り正確に測られていました。ただ、測量の技術や基準は時代とともに少しずつ変化しています。そのため、長い年月が経った土地ほど、「昔の記録」と「今の現地」にズレが生まれることがあるのです。

今のような電子測量機器やGPSがない時代、測量は縄や巻尺を使い、人の経験を頼りに行われていました。境界の目印も、石や木杭を使って決められることが多く、「あの木からこの石まで」といった形で土地が管理されていた時代もあります。現在では、電子測量機器や衛星測位システム(GNSS)を活用し、ミリ単位に近い精度で位置を確認できるようになっています。そのため、当時としては問題のなかった測量でも、現在の精度で確認すると差が見つかることがあります。

さらに、年月の経過によって状況そのものが変わることもあります。道路工事や外構工事、災害、土地利用の変化などにより、境界標が失われたり、位置が分からなくなったりするケースは少なくありません。長年問題なく使われてきた土地でも、売却や建て替え、相続のタイミングで初めて「境界を確認してください」と言われることがあります。

実際に「昔測量したから安心だと思っていたが、建て替えの際に再確認が必要になった」というご相談は珍しくありません。特に古い測量図の場合、現在の測量成果と面積や形状に差が出ることもあります。これまで支障なく使えていたからこそ、確認する機会がなく、そのままになっていたのです。

そして実は、“土地を測る基準そのもの”も、時代とともに変化しています。
日本では以前、「日本測地系」という基準が使われていましたが、現在はGPSなどにも対応した「世界測地系」が基準となっています。さらに、大きな地震のあとには、国の基準点そのものを改めて測り直すこともあります。東日本大震災の際にも、広い範囲で基準点の位置確認が行われました。

土地は動かないものと思われがちですが、測量の世界では「どこを基準に測るか」や「どのように測るか」が時代によって進化しているのです。

最近では、ドローンやGNSS測量など、新しい技術も広く活用されるようになりました。以前よりも短時間で高精度な測量が可能となり、境界や面積をより正確に確認できる時代になっています。ただ、技術が進歩しても、最終的に現地を確認し、資料と照らし合わせながら状況を整理するのは人の役割です。

土地家屋調査士は、昔の資料と今の現地を見比べながら「この土地が現在どのような状態にあるのか」を整理する専門家です。古い測量図を否定するのではなく、その時代の記録を大切にしながら、今の状況に合わせて確認を行っています。

「昔測ったから安心」ではなく、「今の状態を確認しておく」ことが、不動産を安心して使い続けるための大切な準備になります。

もしご自宅に古い測量図があり、「もう何十年も確認していないな」と感じたら、一度専門家に相談してみるのも良いかもしれません。大きな問題になる前に状況を整理しておくことが、将来の安心につながります。

執筆 土地家屋調査士法人ファミリア
ファミリアグループサイトはこちらこちら

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