2026.04.30
コラム第48回「民法改正と新たな後見制度について」

近年、成年後見制度の見直しが進められており、とりわけ実務に影響の大きい補助制度について重要な改正が予定されています。不動産取引の現場においても、意思能力に不安のある顧客への対応は避けて通れないテーマであり、今回の改正内容を理解しておくことは実務上有益といえるでしょう。
まず大きなポイントとして、従来の後見・保佐制度が廃止され、支援の枠組みが「補助」に一本化される方向となっています。これにより、これまで段階的に設けられていた制度区分が整理され、より柔軟な支援が可能となることが期待されています。特に、判断能力が「不十分」である段階から制度利用が可能となる点は、早期の支援介入を可能にするものです。
補助人に関する改正として注目すべきは、家庭裁判所が個別の必要性に応じて権限を設定できる点がより明確化されたことです。従来も、特定の法律行為について補助人の同意を要する旨の審判をすることは可能でしたが、改正後はその対象となる行為の範囲や運用がより実務に即した形で整理されています。例えば、不動産の売買や賃貸借といった重要な財産行為について、個別に同意権の付与が判断されることになります。これは、不動産仲介業者にとって、契約締結時に「補助人の同意が必要かどうか」をより丁寧に確認する必要があることを意味します。
さらに、補助人の役割についても見直しが行われています。補助人は、本人の意向を適切に把握し、これを尊重して事務を行う義務が明文化されました。これにより、単なる形式的な同意権者ではなく、本人の生活や意思を踏まえた支援者としての性格がより強まっています。実務上は、補助人とのコミュニケーションにおいても、本人の意向をどのように反映しているかを意識することが求められるでしょう。
次に、新たに創設される「特定補助人」の制度について触れます。これは、補助開始の審判を受けた者のうち、さらに判断能力が低下している場合に対応する仕組みです。具体的には、精神上の理由により事理弁識能力を欠く常況にある者について、必要があると認められるときに特定補助人が選任されます。
特定補助人の特徴は、その権限にあります。通常の補助人が同意権を中心とするのに対し、特定補助人は、一定の重要な法律行為について取消権を行使することができます。つまり、本人が単独で行った不動産取引などについて、後から取り消すことが可能となる場合があるのです。これは、不動産取引の安全性という観点から非常に重要なポイントです。契約時点では有効に見えても、後に特定補助人によって取り消されるリスクがあるため、より慎重な本人確認と制度利用の有無の確認が不可欠となります。
また、特定補助人の選任には、医師の意見聴取や鑑定が必要とされるなど、手続的にも慎重な判断が求められています。この点からも、制度の濫用を防ぎつつ、真に必要なケースに限定して強い権限を付与する趣旨がうかがえます。
以上のように、今回の改正は、本人の意思尊重と柔軟な支援を重視する方向で制度を再構築するものといえます。その一方で、不動産取引においては、補助人や特定補助人の関与の有無、権限の範囲を正確に把握することがこれまで以上に重要となります。契約の有効性に直結する問題であるため、登記事項や家庭裁判所の審判内容の確認を徹底することが求められるでしょう。
今後、制度の詳細が実務に浸透していく中で、不動産業者としても法的知識のアップデートが不可欠です。顧客の権利を守りつつ、安全な取引を実現するためにも、本改正のポイントを押さえた対応が期待されます。
執筆 司法書士法人ファミリア
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