2026.04.17
コラム第47回「成年後見制度の見直しについて」

成年後見制度は、高齢化の進展や認知症高齢者の増加を背景として、判断能力が不十分な方の権利擁護を目的に整備されてきた重要な制度です。平成12年の民法改正により現在の制度が導入され、本人の意思尊重と自己決定権の保護を基本理念としています。しかし、制度の運用が進むにつれ、いくつかの課題が明らかになり、近年では見直しの必要性が強く指摘されています。
現行制度の主な課題
まず大きな問題点として挙げられるのは、「利用のしにくさ」です。成年後見制度は、一度開始すると原則として本人の死亡、または判断能力が回復しない限り終了しません。そのため、例えば一時的な認知機能の低下や、特定の手続きのためだけに制度を利用したい場合でも、長期間にわたり後見人の関与が続くことになります。この点が、利用をためらわせる大きな要因となっています。また、申立て手続きが煩雑であり、専門職の関与が必要となるケースも多く、一般の方にとって心理的・経済的なハードルが高いことも問題です。
次に、「本人の意思の反映が十分でない」という指摘も重要です。制度上は本人の意思尊重が掲げられているものの、実務においては財産管理の安全性が重視されるあまり、本人の生活の質や希望が後回しにされる場面も少なくありません。特に、後見人が専門職である場合、画一的な対応に陥るリスクがあり、個々の生活事情に応じた柔軟な支援が十分に行われていないという批判があります。
さらに、「後見人による不正や不適切な管理」の問題も看過できません。家庭裁判所による監督体制は整備されていますが、実際には不正が発覚する事例が後を絶たず、制度への信頼を損なっています。特に親族後見人による財産の使い込みなどが社会問題化しており、これが制度利用を抑制する一因ともなっています。
また、「費用負担の問題」も利用拡大を妨げています。専門職後見人が選任された場合、報酬が継続的に発生し、本人の財産から支払われます。資産が限られている場合には、この費用が大きな負担となり、制度利用を断念するケースも見られます。
今後の見直しの方向性
こうした課題を踏まえ、現在、成年後見制度の見直しに向けた議論が進められています。その方向性としてまず注目されるのが、「柔軟な制度設計への転換」です。具体的には、必要な場面に限定して後見人の権限を付与する仕組みや、一定期間で終了する制度の導入などが検討されています。これにより、利用者のニーズに応じた使いやすい制度への転換が期待されています。
また、「意思決定支援の重視」も重要な改革の柱です。従来のように後見人が本人に代わって意思決定を行うのではなく、本人が可能な限り自ら意思決定できるよう支援する考え方が重視されています。これは障害者権利条約の理念とも整合するものであり、今後の制度設計において中心的な視点となるべきものです。
さらに、「監督体制の強化」も不可欠です。不正防止の観点から、家庭裁判所の監督機能の充実に加え、外部監査の導入やICTの活用による透明性の向上などが求められています。また、市民後見人の育成や支援体制の整備により、地域社会全体で本人を支える仕組みを構築することも重要です。
加えて、「費用負担の軽減」についても検討が進められています。公的助成の拡充や報酬体系の見直しにより、経済的な理由で制度利用を断念することがないような仕組みづくりが求められています。
司法書士としての役割と展望
司法書士としての実務においても、成年後見制度の役割は極めて重要です。財産管理や法的手続きの支援を通じて、本人の権利擁護を実現する一方で、現行制度の限界も日々実感しています。今後の見直しにあたっては、制度の利用しやすさと安全性のバランスを図りつつ、真に本人のための制度となるような改革が求められます。
成年後見制度は、単なる財産管理の仕組みではなく、人の尊厳と生活を支える基盤です。その理念を実現するためには、制度の絶え間ない見直しと改善が不可欠です。司法書士をはじめとする専門職が積極的に関与し、社会全体で支えていくことが重要であると考えています。
執筆 司法書士法人ファミリア
ファミリアグループサイトはこちら