2026.01.31
コラム第42回「登記があるから安心、とは限りません」

「登記があるから、この土地や建物は大丈夫ですよね」
相談の場で、こうした言葉を耳にすることがあります。確かに登記は、不動産を考えるうえで欠かせない制度です。ただ、登記があることと、現状がきちんと整理されていることは、必ずしも同じ意味ではありません。
多くの方は、登記を「すべてを証明してくれるもの」と思いがちです。しかし実際の登記は、不動産の一部分を記録しているにすぎません。たとえば建物の場合、登記簿に記載されている内容は、建てられた当時の構造や面積が基本です。その後に増築や減築、使い方の変更があっても、登記が更新されないままになっているケースは少なくありません。
普段の生活では、その違いが問題になることはほとんどありません。住んでいる分には困らないからです。ところが、売却や相続、建て替えといった場面になると、「登記と現状が違う」という事実が、突然はっきりと姿を現します。手続きが進まなかったり、予定していなかった確認が必要になったりするのは、こうしたズレが原因です。
土地についても同じことが言えます。登記簿に地番や面積が記載されていても、それだけで境界の位置や利用状況まで分かるわけではありません。特に古い登記ほど、現在の状況と食い違っていることがあります。登記は不動産の「設計図」のようなものですが、長い年月の中で、現実の姿が少しずつ変わっていくのです。
実際によくある相談の一つに、「今まで何も問題がなかったのに、いざ話を進めようとしたら確認が必要だと言われた」というものがあります。これまで支障がなかったからこそ、確認する機会がなく、そのままになっていたというケースです。
ここで大切なのは、登記が間違っているという話ではありません。登記はとても重要ですが、「登記がある=何も確認しなくてよい」と考えてしまうと、思わぬところで立ち止まることになります。不動産は長く使われるものだからこそ、記録と現状の間に差が生まれやすいのです。
土地家屋調査士は、登記と現地の状況を照らし合わせながら、「今、この不動産がどんな状態にあるのか」を整理する専門家です。何かを急がせるのではなく、見えにくい部分を一つずつ明らかにしていく役割を担っています。
登記は、不動産のゴールではありません。
むしろ、そこから先を考えるための出発点です。
「登記があるから安心」と思ったその一歩先に目を向けることが、結果的に不動産を守ることにつながります。
執筆 土地家屋調査士法人ファミリア
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