2025.11.20

コラム第37回「生前贈与の弱点を“家族信託”でどう補えるか」




 親の財産を「元気なうちにきちんと整理しておきたい」という思いは、多くのご家族に共通しています。ご相談の場面でも、生前贈与を最初の選択肢として挙げられる方はとても多いです。生前贈与は分かりやすく取り組みやすい制度ですが、“移した後”のことまで考えると、気をつけたいポイントもいくつかあります。そこで今回は、生前贈与の弱点を確認しながら、それを補う仕組みとして注目されている家族信託について、司法書士としての実務経験を踏まえて解説します。

 生前贈与のメリット
 生前贈与には、親が元気なうちに財産の行き先を決められるという大きなメリットがあります。子世代が早い段階で財産を引き継げるため、将来の相続手続きがスムーズになりやすいという点でも有効です。特に「自宅だけでも早めに子どもに移しておきたい」「生活に余裕のある今のうちに少しずつ渡しておきたい」というケースでは、選択肢としてよく使われています。
注意したいポイント(税務の判断は税理士に確認が必要です)
 一方で、生前贈与には次のような注意点があります。第一に、一定額を超える贈与では税金が関わる可能性があることです。ただし税務の詳細判断は税理士の専門領域となるため、具体的な金額や最適な方法を知りたい場合は必ず税理士へ確認いただく必要があります。第二に、贈与後の財産管理が意外と負担になる点です。名義を移した後は、その財産は受け取った側が責任を持つことになります。不動産であれば修繕・固定資産税・賃貸管理といった実務が伴い、「名義だけ移したものの管理が大変」というお声をいただくこともあります。第三に、親が将来認知症になった場合、生前贈与していない財産の管理が難しくなることです。民法上、判断能力が低下すると契約行為は制限されるため、預金の払い戻しや不動産売却ができない“財産の凍結”状態が起こり得ます。
 
 家族信託とは?
 ここで家族信託が登場します。家族信託は、財産の「名義」と「管理」を分けることができる仕組みです。
 委託者(親)…財産を託す人
 受託者(子)…財産を管理する人
 受益者(親)…財産から利益を受ける人
 このように、管理を子どもに任せつつ、財産の利益は親が受け続けることができます。ここが生前贈与との決定的な違いです。
 
 生前贈与の弱点を家族信託で補えるポイント
 ① 管理の担い手を明確にできる
 生前贈与は「名義を移す」制度ですが、家族信託は「誰がどのように管理するか」を契約で定める制度です。不動産の修繕、賃貸管理、売却が必要になった場合など、受託者が契約に従って柔軟に対応できます。「名義は親のままだけど、管理は子が行う」という役割分担ができる点が実務上大きなメリットです。
 ② 認知症による財産凍結を防げる
 家族信託で預けた財産は、親の判断能力が低下しても、受託者が継続して管理できます。成年後見制度のように裁判所の許可を都度得る必要がなく、親の生活費確保や不動産の売却などもスムーズに行えるため、実際の生活に直結する安心感があります。
 ③ 承継の流れを「契約」で決めておける
 信託契約では、親の死亡後に誰が利益を受けるか、最終的に財産を誰に渡すかまで決めることができます。遺言と併用することも可能ですが、家族信託は「親→子→孫」のように複数世代にまたがる設計ができるため、承継の流れをより安定的に整えることができます。

 生前贈与と家族信託の併用という“選択肢”
 実務の中では、状況に応じて「生前贈与と家族信託を併用する」という選択肢が検討されることがあります。移しやすい財産は生前贈与で、管理や承継の設計が必要な財産は家族信託で、といった役割分担をすることで、負担の分散や将来の見通しが立ちやすくなるケースもあります。ただし、併用が必ず適しているわけではなく、ご家庭の状況・財産の種類・目的によって最適な方法は大きく異なります。

 まとめ
 生前贈与にはメリットがある一方、管理・認知症リスク・承継の設計といった面では弱点が残ります。家族信託は、その弱点を補いながら、ご家庭ごとに合った財産管理の形をつくることができる制度です。ただ、どの手法が最適かは本当にご家庭によって異なります。「どの制度が合うのか」「何から始めればいいか」といった段階からでも大歓迎ですので、まずはお気軽にご相談ください。司法書士として、ご家族にとって最も安心できる選択肢をご提案いたします。


執筆 司法書士法人ファミリア
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