2025.05.20

コラム第25回「休眠担保権の抹消~古い担保権の抹消について~」



 「相続した土地にかなり昔の抵当権がついてて売却ができないけれど、どうやったら消せるの?すぐにできるの?」
 というご相談が多々ございます。
 相続登記義務化のあおりもあり、相続後、空き家になる実家や、地方の不動産のご売却を検討している中で見つかる事例が増えております。
 
 今回はその様な特殊な担保権:休眠担保権についてご紹介したいと思います。

Ⅰ、そもそも休眠担保とは?

 休眠担保権とは、一般的には「現在に至るまで抹消されることなく存在する、明治・大正・昭和初期に設定された古い抵当権等※」を指します。



 こちらの画像はサンプルですが、明治24年に抵当権が設定されおります。地方の不動産を相続したりすると、この様な古い抵当権が残っていることが少なくありません。

Ⅱ、どの様な方法で抹消するのか?
 
 休眠担保権の抹消においてはまず、抵当権者が個人か法人かで手続き内容が異なりますのでそれぞれのパターンをご紹介いたします。

①抵当権者が個人の場合

 この場合、抵当権者が行方不明であるかそうでないかで行う手続きが変わってきます。
 抵当権者本人がご存命もしくは相続人がいる場合は本人もしくは相続人全員からご協力いただいて抹消登記を申請するか、ご協力いただけない場合は裁判所に訴訟を提起して判決をもらって単独で抹消登記申請をすることになります。
 
 調査の結果、抵当権者が行方不明である場合は、一定の条件はありますが不動産登記法の特例と供託による方法を用いて単独で抹消登記申請をすることになります。

②抵当権者が法人の場合
 この場合、法人の登記簿が存在するかどうかで手続きが変わってきます
 
 当該法人が合併等を経て現存している場合はその法人と協力をして抹消登記申請をするか、訴訟による判決を得て抹消登記申請を行うことになります。

 もし、法人登記簿が閉鎖もしくは休眠状態となっている場合はその法人の登記上の役員を調査し、所在不明であれば、裁判所に代表者の選任申立てを行い、その者と協力して抹消登記申請を行います。なお、一定の条件を満たせば不動産登記法の特例により単独で抹消登記申請をすることができます。

 法人の登記簿が存在せず全くの所在不明の場合は個人が行方不明である場合と同様に、一定の条件はありますが不動産登記法の特例と供託による方法を用いて単独で抹消登記申請をすることになります。。

 以上が休眠担保権の抹消方法となります。
(他にも方法はございますが、非常に複雑であり、実務でもあまり利用されておりませんので、基本的な抹消方法のみご紹介いたしました。)

Ⅲ、まとめ

 休眠担保の抹消方法はいくつかございましたが、共通しているのは、通常の抹消手続よりもはるかに時間と費用がかかるということです。

 小職も、お客様からお時間と費用について聞かれた際は、「少なくとも半年から1年位の期間をいただきます、また、費用も場合によっては印紙代・実費を除いても100万円以上かかることもございます。」と伝えています。

 さらに、相手方からの協力を得ることができず、かつ、訴訟も希望しない場合は手続を進めることができませんので、中断もしくは手続きが中途で終了することになります。また、この場合も調査した分までの報酬と調査に要した費用・実費を頂くことになりますので、手続をご検討される場合は、お時間と費用に余裕をもってご相談されることを強くおすすめします。

 以上から、休眠担保権の抹消方法は非常に複雑になっております。ご不明な点がございましたら登記の専門家である司法書士にお気軽にご相談くださいませ。
 
 ※補足:休眠担保権の抹消を訴訟で行う場合
 休眠担保権の債権額は数十円~数百円であることが多く、訴額が140万円以下であることがほとんどです。例外もございますが、簡易裁判所にて裁判手続を行うことができますので法務大臣から認定を受けた司法書士でしたら弁護士と同様に訴訟代理人として業務を行うことができます。

執筆 司法書士法人ファミリア
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