2025.04.21
コラム第23回「高齢の親を詐欺から守る『家族信託』のススメ」

1 高齢者はなぜ狙われやすい?
オレオレ詐欺や振り込め詐欺などの特殊詐欺の2024年の被害額は、過去最悪の721億円となったそうです。2000兆円を超える個人金融資産のうちその6割を60歳以上の高齢者が持っているとなると、高齢者が詐欺のターゲットにされるのも当然です。また、認知症やおひとり様の増加で、「だましやすい」高齢者が増えているのも狙われる理由となっています。
こうしたトラブルにあわないために、まずは高齢者を狙った詐欺の手口を知っておくことが重要です。今回は、最近話題となっている不動産に関わる詐欺の手口を2つご紹介していきます。
2 知らないうちにアパートを買っていた
2024年6月、高齢者60名以上に不動産物件を不当な高値で購入させ、7億円以上をだましとったとして不動産業者社員が逮捕されました。
この業者は、名簿やマニュアルを使い高齢者に電話をかけて認知機能の程度や資産状況を聞き出し、だまされやすい高齢者を探して契約をしていました。
契約をせまる相手の確認ポイントは、
・認知機能の程度
・資産があるか
・一人暮らしか
・ヘルパーがいるか
・家族との距離感
・こちらのペースで話ができるか 等々
高齢者の多くは、健康やお金などの不安や孤独感を抱えています。悪徳業者は言葉巧みにこれらの不安をあおり親切にして信用させ、賃料収入が得られるとだまし相場の10倍以上の金額で購入させていたのです。また、1部屋全部ではなく持分を購入させることで、簡単に売却できないようにしていたとみられています。
3 昔買った別荘地を売らないかといわれて(原野商法の二次被害とは?)
原野商法とは、値上がりの見込みがなく資産価値のない土地を高額で売りつける悪徳商法です。特に1960年代から1980年代にかけて流行し、多くの被害が発生し社会問題となりました。
昨今、その被害者や負の不動産所有者に対して、売るのではなく逆に「土地を高く買い取る」と勧誘し、調査費用や税金対策といった名目でさらに金銭をだまし取る二次被害が増えています。
資産価値の低い土地を持っていると、相続後に子や孫に苦労をかけることになります。悪徳業者はそうした高齢者の気持ちにつけこんでお金をだましとるのです。
4 高齢者を詐欺被害から守る方法
詐欺被害は、犯人がすでにお金を持っていない場合がほとんどなので、被害にあった後に被害回復を図るのは非常に困難です。そのため、被害にあう前に高齢者の資産を守る対策を立てておくことが重要です。
では、どのような対策を立てておくとよいのでしょうか。今注目されているのが、「家族信託」という方法です。
家族信託とは、信頼する家族に不動産やお金の管理を任せておくしくみです。不動産やお金を管理する権限は、高齢の親ではなく家族に移るので、詐欺や訪問販売の人が訪れても、高齢の親だけで財産処分することができないので安心です。認知症対策として活用されている家族信託ですが、詐欺対策としても有効なのです。
一見日常生活に支障がないように見えても、少しでも認知機能の低下がみられると、悪徳業者は巧妙につけこんできます。せっかく老後のために貯金したお金や、先祖代々承継してきた不動産が詐欺にあっては大変です。高齢の親の財産を詐欺から守るために、家族信託で備えておいてはいかがでしょうか
執筆 司法書士法人ファミリア
ファミリアグループサイトはこちら