2025.03.31

コラム第22回「故人の財産の探し方」



 相続に関する手続きを進める上で必要なことは、故人の財産の内容を正確に把握することです。財産の全容を明確にしなければ、遺産分割の話し合いや相続税の計算ができません。
 もちろん、故人が生前に財産目録を作成し、どこにどのような財産があるのかが整理されていれば、確認作業は比較的スムーズに進みます。しかし、多くの場合、財産状況がわからずに相続手続きを進めなければならないのが現実でしょう。特に、最近はインターネットバンキングの普及により、紙の通帳がないネット銀行の口座を持つ人も増えています。また、電子マネーや仮想通貨など、従来とは異なる形態の財産も増えており、調査が複雑化しています。
 本記事では、故人の預貯金や不動産を調査する方法や注意点等についてお話したいと思います。

(1)預貯金の調査方法
 故人の預貯金を調査する方法はいくつかありますが、まずは基本的な情報収集から始めます。
1. 通帳やキャッシュカードを探す
 自宅を整理しながら、銀行の通帳やキャッシュカードがないか探します。古いものでも解約されていない可能性があるため、捨てずに確認しましょう。
2. 金融機関からの郵便物等をチェックする
 郵便物やパンフレット、タオルやボールペン等の銀行から貰ったと思われる粗品から口座の手がかりを探すことができます。
3. クレジットカードや電子決済の明細を確認する
 クレジットカードの引き落とし口座として登録されている銀行を特定できれば、預金口座がわかります。また、電子マネーのチャージ元銀行口座を確認することで、口座を見つける手がかりとなります。
4. 被相続人の生活圏内の金融機関に照会する
 故人がどの金融機関を利用していたか明確でない場合は、自宅近くの銀行や郵便局、勤務先の近くの金融機関を調査します。特に長年住んでいた地域の金融機関には口座がある可能性が高いです。なお、ゆうちょ銀行については、口座をお持ちの方が多いので、調べることをお勧めします。
5. ネット銀行の履歴を確認する
 ネット銀行は通帳を発行しないため、故人がインターネットバンキングを利用していたかどうかの確認が必要です。可能性がある場合は、パソコンやスマートフォンのブラウザ履歴、メール等をチェックしましょう。また、ネット銀行からの郵送物があるかも併せて確認します。
6. 給与振込口座や年金受取口座を特定する
 給与や年金の振込口座を調べることで、取引銀行を特定できます。年金は通常、特定の金融機関に振り込まれているため、日本年金機構からの通知書類も参考になるでしょう。

(2)不動産の調査方法
1.権利証や登記簿謄本を探す
 故人が所有する不動産の権利証や登記簿謄本を探し、所在地や所有権の状況を確認します。
2.固定資産税の納税通知書を確認する
 毎年送られてくる固定資産税の納税通知書には、故人が所有する不動産の情報が記載されています。
3.市区町村役場での名寄帳の取得
 市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると、故人がその自治体内で所有する不動産の一覧を確認することができます。
4.法務局での登記情報の確認
 故人が所有していた可能性のある不動産について、法務局で登記情報を調査することも有効です。

(3)注意点
 まず、預貯金についてですが、故人の預貯金が特定できたら、次に相続人がすべきことは、金融機関に対して残高証明書の発行や取引履歴の開示を請求することです。この際、注意すべき点としては、預貯金の調査は、各支店ごとの照会が必要だということです。
 金融機関によって対応は異なりますが、多くの銀行では、口座の有無に関する問い合わせを各支店単位でしか受け付けていません。つまり、一つの支店に問い合わせても、その金融機関のすべての支店の口座を一括で調べてもらうことはできないのです。複数の支店で口座を開設している可能性がある場合は、それぞれの支店に問い合わせる必要があります。
 また、金融機関に被相続人が死亡したことを伝えると、預金口座は凍結され、相続手続きが完了するまで預金の引き出しはできなくなります。
 不動産については、名寄帳の取得は不動産調査方法として大変便利なものではありますが、「課税されていない不動産」は載ってこないことに注意が必要です。例えば、よくある例として、自宅の前にある公衆用道路(不特定多数の方が通行する私道)は非課税となるため、名寄帳には記載されません。私道一つの見落としで再度の遺産分割協議が必要となることもあります。また、私道そのものに財産的な価値がそれほどなかったとしても、将来不動産売却をする際に私道の登記が漏れていたことで売却ができなくなるケースもあるのです。

(4)まとめ
 このように、相続財産の調査は、相続人にとって非常に負担の大きい作業になります。残された家族が困らないようにするためには、生前に自分の財産を整理し、どの金融機関に預貯金があるのか、自分が所有している不動産はどこなのかをまとめた財産目録を作成し、相続人に伝えておくことが重要です。さらに、遺言書を作成しておけば、相続人同士のトラブルを防ぐことにもつながるでしょう。
 「自分が亡くなった後のことを考えるのは縁起が悪い」と思うかもしれませんが、相続は誰にでも必ず訪れる問題です。元気なうちにしっかりと準備しておくことが、残された家族への最大の思いやりではないでしょうか。

執筆 司法書士法人ファミリア
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