2025.02.28
コラム第20回「仮登記制度について」

皆様は仮登記という制度はご存じでしょうか。
仮登記とは簡単に申し上げますと不動産登記において一定の要件を満たしていた場合に登記の優先順位を確保するための登記手続きとなります。
今回は仮登記制度についての概要を説明をさせていただけたらと思います。
まず不動産登記制度は先に登記を入れた者がその後に登記を入れた者やそもそも登記を入れていない者に勝つという大原則がございます。
仮登記とはここでいう「登記」そのものではございません。
とは言うもののこれを入れておくことでその後に登記をした第三者に勝てるという制度となっております。
仮登記には大きく分けて二つの種類がございます。
・1号仮登記
まず一つ目は1号仮登記というものです。
例えば農地について売買契約があった場合に契約が締結済みでかつ、農地法の許可が下りている場合、つまり所有権が買主に移っていること(本件で言うなら農地法の許可が下りていること)を前提に行う仮登記であり、この仮登記を入れる要件は登記手続きの際に
①権利証を紛失している場合(後程探して見つける必要があります)又は
②第三者の許可、同意、承諾書(以下許可書等)を紛失により提供できない場合です。
①につきましては説明が不要かと思います。
問題は②についてです。
先の農地の売買の事例に当てはめますと農地法の許可が適法におりてはいるが許可書を紛失しており見当たらない場合です。
許可が下りている以上登記を入れずとも所有者は既に買主になっております。
(原則、売買は当事者間で特別な約束が無い限り当事者の意思のみで成立し・効力発生しますが農地については許可が下りなければその効力が発生しないためです。)
しかし買主名義の登記をするには農地法の許可書が必要です。
ここで困るのが買主です。
自身が所有者であることを主張するには冒頭で説明した大原則の「登記」を入れなければならないところ、許可書が無いのです。
この時に入れることが出来るのが1号仮登記となります。
1号仮登記ではこの手続きの際に権利証と許可書等を付けずとも入れることが出来ます。また1号仮登記は(後程お話しする2号仮登記も同様)仮登記を入れた時点の順位を保全することが出来ます。
具体的にお話しするならこの仮登記を入れた後に他人が抵当権設定や所有権移転等の「登記」を入れていてもこれらの権利を全て消したうえで自身の登記(仮登記を使用して入れる本登記)を入れることが出来ます。
以上のように所有権を既に得ている買主が権利証や許可書等を紛失により法務局に提供できずとも、その順位を守ることが出来る登記が1号仮登記というものです。
・2号仮登記
2号仮登記とは1号仮登記と異なり先の事例で言うところ、農地法の許可が下りていないが、その許可が下りることが条件であることを前提として入れることが出来る仮登記です。
イメージとしてはそもそも許可が下りていない状態、つまり所有者自体はまだ売主のままで今後許可が下りるのに備えて買主の登記の優先順位を確保するための仮登記と理解していただいて大丈夫です。
1号仮登記は権利証や許可書(許可が下りていることが前提)を紛失して提供できない場合に入れるのに対して2号仮登記は権利証が紛失している必要が無く、また許可等に至ってはそもそも下りている必要もないのです。
法律的にはまだ条件未成就状態の買主の権利、先の事例で言うところの農地法の許可が下りていない状態で、かつ、まだ所有者でない買主の権利を守ってあげようという考えがあるためこのような仮登記ができると理解いただいて大丈夫です。
1号仮登記同様この2号仮登記も後から登記を受けている第三者の登記(所有権や抵当権等)を消して自身の登記を入れることが出来ます。
いかがだったでしょうか。
仮登記は複雑でまだまだ論点がたくさんございますが今回は基本的な1号仮登記と2号仮登記についてのお話でした。
執筆 司法書士法人ファミリア
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