2025.01.21
コラム第17回「相続登記を放置していたらどうなるのか?」

不動産登記法が改正され令和6年4月1日から相続が発生した際に原則として3年以内に相続登記をしなければ正当な理由がある場合を除いて過料が科されるという、いわゆる相続登記義務化がはじまりました。
新聞やテレビでの報道、国・自治体での積極的な広報によりこの相続登記義務化が周知されたため相続に関するお客様からのご相談が非常に多くなりました。
ですが義務化と罰則がある面ばかりに陽があたりすぎてしまい、相続登記を放置することの本当の問題点・デメリットが陰に隠れてしまっている感は否めません。
実際にご相談されるお客様の多くは「相続登記をしないと罰則があるんでしょ?テレビで言ってたよ。」と罰則のことばかりご心配されております。
もちろん罰則が設けられたことにより国民の相続に対する意識が高まったのは事実です。実際にそれをきっかけに相続の相談にいらっしゃる方が増えました。
そこで今回は相続登記を放置することの本当のデメリット紹介していこうと思います。
Ⅰ、相続登記について
まず、相続登記のおおまかな流れを解説いたします。
※事例:名義人が亡くなり相続人が妻と子どもの2人だった場合
①亡くなった方と相続人全員の戸籍を集める。
③財産を把握する。
④相続人全員で遺産分割協議をおこない誰が名義人となるのかを決め書面を作成し、実印を押す。
なお、遺言が残されており、誰が相続するのか明確になっている場合は基本的には遺産分割協議は必要ありません。
⑤登記に必要な書類を集めて法務局に登記申請をする。
以上がおおまかな流れとなります。
・相続人の中に未成年者や認知症等を患い判断能力が無い方がいた。
・相続財産が極端に多い
・相続人同士の仲が非常に悪いような場合
などの事例であれば手続きが煩雑になってしまいますが通常の相続登記自体はそこまで難しくはありません。お客様の中には法務局で相談をしてご自身で相続登記をされる方もいらっしゃいます。
Ⅱ、相続登記を放置していると・・・
Ⅰで解説をしました通り相続登記それ自体はそこまで難しいものでもありません。ですが相続が発生したにもかかわらず長年に渡り放置しておりますと手続きが非常に複雑なものになってしまいます。
筆者が体験をした事例をモデルに解説していこうと思います。
筆者が、別の司法書士事務所で勤めていたころの事例ですが、お客様から「実家の売却を検討しているが名義を見たら昭和に亡くなった祖父の名義のままなんだけどどうしたらいい?」との相談がございました。
そこで相続関係を調査したところ以下のような状況になっておりました。
①名義人の方が亡くなったのは昭和40年代。
②名義人の妻と子ども兄弟は全員亡くなっており、さらに下の子どもである相談者と同じ孫の世代が主な相続人。
③孫世代の方も高齢者であるため亡くなっている方がおり孫世代のさらに下の相続人もいる。
この様に名義人の方が亡くなり放置していたらさらに2次的・3次的に相続が発生することを「数次相続」といいます。
Ⅰで説明しましたとおり相続登記をするには原則として相続人全員で遺産分割協議をして名義人を誰にするのかを決める必要があります。
ですがこの数次相続が起こってしまいますと最終的な現代までの相続人の数が増え、また、当事者同士の相続関係も希薄である可能性が高く普段付き合いのないもしくは一度も会ったことがないとういうことも十分に考えられます。
この様な状態で遺産分割協議を行うのは非常に困難となります。
実際に相談者の方と話し合って相続人全員に「遺産分割協議にご協力ください」という旨のお手紙を送ったのですが、
・返事が返ってこない。
・「ほとんど他人と同じなんだから怖くて実印なんか押せない」との返答があった。
・手紙が到達せず返ってくる。
・手紙の受け取りを拒否された。
など、そもそも遺産分割協議がまとまる以前に協議を行うことすらできませんでした。
遺産分割協議ができない場合は基本的に弁護士に依頼して裁判手続きをすることになりますが、相続人が多いとそれだけでかなりの時間と裁判費用がかかってしまうことになります。
結果的に他の相続人からの協力が得られず、また、相談者がご高齢のため体調を崩してしまったこともあり相続登記を行うことができませんでした。
Ⅲ、まとめ
以上のように相続登記を放置することの本当のデメリットは罰則があることではなく相続関係が複雑になってしまい、通常であればできた相続登記をするのが非常に難しい状態になってしまうということです。
ですので相続が発生しましたら罰則の有無にかかわらず早めに相続登記をされるのを強くおすすめします。
・相続して誰も住まなくなった実家を売却をしたいが親名義のままになってる
・何世代も上の亡くなった親族名義のまま放置されれいる
など、相続に関するお悩みは非常に多いです。
我々司法書士は相続登記手続きの専門家ですので相続に関するお悩みがございましたらいつでもご相談させていただきます。
執筆 司法書士法人ファミリア
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