2024.12.26

コラム第15回「これからの相続対策を考える」



 最近、相続人の一人が認知症で、遺産分割協議ができず困っている…というご相談をよくいただきます。
 高齢化が進む現代社会においてこの問題は、今後ますます多くなると予想されます。
 認知症の方は、意思能力を欠いているとして、遺産分割協議等の「法律行為」を行うことはできません。遺産分割協議を行わないで相続するとなると、方法としては①法定相続による方法と、②成年後見制度を利用する方法のどちらかになります。
 ただ、①の法定相続による方法では、相続財産は全て相続人全員の共有状態になってしまいます。例えば不動産の場合ですと、認知症の方を含めた相続人全員が名義人となりますので、その後、売却等の処分ができず、困ったことになります。また、預貯金の解約手続きについても、金融機関によっては、手続きの際に法定相続人全員の署名捺印を求めてくる場合もあるため、「法定相続分通りの分け方であれば認知症でもなんとかなる!」とはならないのです。
 また、②の成年後見制度を利用する…というのも、やはり簡単ではありません。というのも、この成年後見制度は遺産分割協議をするためだけに選任して、協議が終われば終了とすることが今のところできないからです。一度選任がなされれば、被後見人が亡くなるまで一生財産管理は継続し、毎年家庭裁判所に対して業務報告書を提出する義務が生じます。申立てから選任にはかなりの時間を要しますし、選任後は後見人に対する報酬も発生します。そのため、今後本人の財産管理等を行う必要性があり、その一環として遺産分割をする、ということであれば良いのですが、遺産分割のためだけに安易に成年後見制度を使うことはお勧めできません。
 では、どのような対策を取っておくべきだったのでしょうか。
 対策の一つとして挙げられるのは、お元気なうちに遺言書をしっかり作成しておくということです。遺言書を書いておくことで、遺産分割協議の必要がなくなりますので、スムーズに財産の引継ぎをすることが可能となります。自分が築き上げた財産を自分が渡したい相手に引き継がせることができるのです。
 ただ、残念ながら遺言にも限界があります。
 遺言書をせっかく作成したとしても、受遺者がこれを拒否するケースもありますし、相続人全員で遺言書と全く違った遺産分割協議をするケースもあります。そうなると、遺言者の最後の想いの実現ができない状況となります。更に言えば、遺言では、自分の財産を誰に帰属させるかまでは決められますが、その次の相続のことまでは決められません。例えば、大変思い入れのある土地があり、これは他人には売却せず、自分の子孫に受け継がせていきたいと思ったとします。この場合でも、「自分の亡き後、土地は息子Aに相続させる。Aが亡くなった後は、孫のBに相続させる…」といったことまでは遺言では決められないのです。
 また、遺言は民法に規定された遺言の要件を満たさなければ無効となる等、手続き面でも厳格に行う必要があります。
 そして、遺言が誰でも知っている制度でありながら、世の中の全員が当たり前のように作成しているわけではないのは、「遺言」というものが自分の「死」を意識せざるを得ないものである性質上、縁起が悪いと感じてしまったり、まだ自分は元気なのだから急いで作成する必要はないと思うからなのかもしれません。
 相続人側としても勧めにくい、言い出しにくいですよね。「お父さん、そろそろ遺言書作っておいてね!」なんて言えば「早く死んで欲しいのか!!けしからん!!」なんてケンカになってしまうと考えられている方も多く、気軽に作成するには少しハードルが高いのかもしれません。
 そこで、最近注目されている新しい相続対策が「家族信託」です。
 家族信託は、契約ですので、遺言のように遺言者の死亡の時から効力が発生するわけではなく、契約をした時から(つまり生前から)、死亡後まで財産を自分の思う通りに管理・運用することができるのです。
 契約ですので、内容も自由に柔軟に設定することができます。
 財産の帰属先も遺言のように次代までに限られません。何より自分が元気な内から大切な財産の承継準備ができ、その運用状況を見届けることができますので、前向きに考えることができるとのご意見も多く聞きます。
 弊社は、この家族信託に特に力を入れており、個別相談会やセミナー開催実績も多数ございます。お客様のご希望や状況をふまえ、あらゆる角度から検討し、お客さまに最適な方法をご提案させていただきますので、ご興味を持たれた方はお気軽にご連絡いただければと思います。

執筆 司法書士法人ファミリア
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