2024.11.30

コラム第14回「所有者不明土地管理制度」



1.背景
 土地の所有者が不明であったり、所有者は判明していても行方不明になっていると、土地の適正な管理がされません。公共事業や復旧復興事業を円滑に進める上での妨げとなるほか、長い間放置されると、雑草の繁茂やゴミの投棄など周辺住民の生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。使っていないのであればその土地を利用したいと考える人もいます。
 土地の適正な管理を求める人やその土地を利用したい人が所有者に接触しようとしても、所有者の探索に多大な時間と費用がかかりますし所有者にたどり着けない場合もあります。
 こういった不動産登記簿等で所有者が判明しない土地や所有者に連絡がつかない、いわゆる「所有者不明土地」が増加しており、所有者不明土地を管理したり利用する制度の整備が社会的に求められていることから、制度の見直しが行われました。

2.制度の見直し
 これまでも不在者財産管理人の制度がありました。この制度では、裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうことで、所有者が判明していても所在が不明である「不在者」の財産を管理することができました。しかし、不在者財産管理人は特定の土地だけではなく不在者に属する財産全般を管理しなければならず、申立人等の利用者にとっても負担が大きいものでした。
 また、所有者を特定できない土地については不在者財産管理人の制度は利用できませんでした。
 そのため、特定の土地についてのみを管理したり利用する目的では活用できる、個々の土地の管理に特化した財産管理制度が新たに設けられました。

3.所有者不明土地管理制度
 令和3年の民法改正で所有者不明土地管理制度が設けられました。
 調査を尽くしても所有者やその所在をしることができない土地について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになりました。
 所有者不明土地管理人には弁護士・司法書士等の専門家が選任され、保存行為と所有者不明土地等の性質を変えない範囲内においてその利用または改良を目的とする行為を行う権限があります。さらに裁判所の許可を得ることでこれらの範囲を超える行為をすることもできます。つまり管理人が不動産を売却することも、「裁判所の許可があれば」という注釈は付きますが可能になります。
 
 この制度を利用するには、①調査を尽くしても所有者を知ることができず、または所在を知ることができない土地であること、②利害関係人が請求することが必要です。
 ①について、「調査」とは、不動産登記簿上及び住民票上の住所に居住していないかどうかを調査することを指します。
 ②について、「利害関係人」とは、所有者不明土地を適切に管理するという制度趣旨に照らして判断され、隣接地所有者や、一部の共有者が不明な場合の他の共有者、土地を時効取得したと主張する者、公共事業の実施者が該当すると考えられます。
 
 民間の購入希望者についても、土地購入に具体的計画があるか、利用方法や事業が適正な管理に資するものであるか、代金の支払い能力などで「利害関係人」に当たるか総合的に判断されます。

4.結び
 今回は、所有者不明の土地の利用や管理について、所有者不明土地管理制度について取り上げました。


執筆 司法書士法人ファミリア
ファミリアグループサイトはこちら
 

お知らせ 一覧へ

PAGETOP