2024.10.30

コラム第12回「中間省略登記と第三者のためにする契約」



 「①AさんからBさんへ②BさんからCさんへと不動産を売却したんだけどAさんからCさんへ直接名義を移せないか?」
 
 本来不動産の名義は①Aさん→Bさん②Bさん→Cさんというように記録しなければなりません。
 なぜなら登記というものは不動産の権利や名義の流れと経緯を正確に公示するためのものだからです。
 ですが、直接Cさんに移すことによって費用や税金を安くしたいということから クライアントの方々から上のような相談を頂くことがあります。
 
 この様にBさんを経由しないでCさんへ直接名義を移す方法を「中間省略登記」と呼びます。
 かつては実務上、この中間省略登記が幅広く行われていましたが平成17年の不動産登記法改正により原則としてすることができなくなりました。

 そこで現在では中間省略登記に代わる新たな方法として「第三者のためにする契約」という制度が利用されています。
 この「第三者のためにする契約」を利用することによってあたかも中間省略登記をするのと同じように直接Cさんに名義を移すことができます。


「第三者のためにする契約」とは「民法」という法律に規定されているもので、おおよその流れは下記のようになります。

 ①AさんとBさんの間で不動産売買契約を締結します。

 ②その契約にはBさんからAさんに売買代金が支払われたときにBさんが指定する第三者にAさんから直接名義が移る旨の特約が盛り込まれています。

 ③Bさんは第三者としてCさんを指定します。

 ④CさんはAさんに対し、自分が直接不動産の名義を受ける旨の意思表示をします。

 ⑤その後、BさんからAさんに売買代金が支払われることによってAさんから直接Cさんに所有権が移転することになります。

 このようにAさんとBさんの契約にCさんを巻き込むことによってAさんから直接Cさんへ名義を移すことができるようになるのが「第三者のためにする契約」を利用した名義変更の方法となります。

 しかしクライアントの方々から「この様な方法は中間省略登記が認められなくなったから生み出された一種の脱法行為ではないか?」とのご質問をいただくことがありますが、上記のとおり、この「第三者のためにする契約」は「民法」という法律で認められている制度ですのでその点につきましてはとくに問題はございません。(民法第537条参照)


 「第三者のためにする契約」を活用することによって従来の中間省略登記に代わり直接Cさんへ名義を移すことができます。しかしこの制度にもデメリットはあります。

 一つ目は名義に関してはAさんから直接Cさんへ移りますが、売買代金はCさんからBさんへ入金後、その代金でBさんからAさんへの売買代金が支払われるため(Bさんが売買代金を一旦立て替えている場合を除いて)通常の売買と比較してお金の流れが煩雑になることが考えられます。また売買代金の入金確認も長時間に及ぶ可能性が考えられます。

①CさんからBさんへの売買代金支払い
②BさんからAさんへの売買代金支払い
これらの2つの入金が確認できてはじめて名義変更ができるためです。
※一般的な売買ですと買主の方から売主の方へ売買代金の支払いの確認ができれば名義変更はできますので1つの入金確認で終わります。

 二つ目は①AさんとBさん②BさんとCさんでの売買代金の支払いが別々の日にちであった場合、名義がAさんのままであるため、その間に別の名義が入ってしまったり、差押えがされてしまうリスクがあります。

 三つ目は上記の様に通常の名義変更より複雑なのでCさんへ融資をする金融機関によっては直接移転方式を認めていないことがあります。


 以上のように「第三者のためにする契約」という制度を活用することによって直接名義を移す方法は現在でもすることができます。
 しかし、その反面に通常の名義変更よりも複雑な手続きになるためトラブルになることも少なくありません。

 我々司法書士は登記・不動産の名義変更の専門家ですので直接名義を移すことをご検討中の方はいつでもご相談を承ります。


執筆 司法書士法人ファミリア
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