2024.09.20
コラム第9回「なぜ決済に司法書士が必要なのだろうか?」
このコラムを見られている方の中には、不動産取引に従事されている方も多いかと思います。不動産取引で決済の際、司法書士が立ち会いますよね。なんで司法書士が必要なのかと思ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか?今日はそんなお話をしていきたいと思います。
まず初めに、司法書士とはなんぞやと思う方も多いと思います。司法書士という資格は、報酬をもらって、登記申請の代理人になることができるというものです。
と言っても、よくわからないですよね?もう少し詳しく説明していきます。
皆さん、日常で売買という言葉をよく聞くと思います。「売買」ってどういうことだと思いますか?
売買というのは、売主と買主の両者が、「売った」「買った」という2つの意思表示があると、発生していきます。代金を払ったり、モノを受け取ることは、その意思表示の後の話であって、「売買」という行為の発生には必要ないのです(もちろん、最終的には、支払いや受渡しは出てきますが)。
ただ、意思表示だけだと怖くないですか?買主からすると本当に買ったものがもらえるのか?売主からすると本当に代金の支払いがあるのか?という疑念が湧いてきます。そこで一般的には、買主が代金を支払うと、その場でモノを受け取ることができます。これを「同時履行」と言います。皆さんも、普段スーパーマーケットで食料品や日用品を購入する時は、お金の支払いと同時に、モノを受け取れるということを普通にやっています。お肉を買いたい時、お金を払うと、そのお肉がもらえますよね?
不動産取引の場合はどうか?不動産の売買の場合も、売買契約書の中に移転時期特約という条項があります。「買主が代金を全て支払ったときに、所有権を移転する。」という条項です。不動産売買の場合、金額が高額になることが多いです。買主側からすると、何千万円という大金を払ったのに、不動産が自分のものにならなかったら、怖いですよね?
ただ、不動産はスーパーでお肉を買うようには、スムーズにモノを受け取ることができません。家の鍵を受け取ったからと言って、自分のものになったとは言えません。不動産が自分のものかどうかというのは、法務局に保管されている登記簿(土地の名簿)の名義を書き換えることが必要になります。これは法律で決まっていて、お肉や消しゴムなどの「物」のように、持っているからと言って、自分のものだというお話ではないのです。売主にお金を支払って、名義書換えの申請を法務局に提出して、名簿の書き換えをしてもらう。なかなか時間のかかる作業になります。支払いと同時に受渡すということがイメージしづらいと思います。そこで司法書士が不動産取引の場に登場します。一般的に、最後の「決済」と呼ばれる日にだけ、我々は出ていきます。
決済の場で、司法書士は、何をしているのか?
司法書士は、その場で、売主から買主への不動産の名義の書換えができるのかを確認します。権利証などの書類が整っているかだけでなく、今目の前にいる人が、本当に不動産の所有者なのかという本人確認をしていきます。
買主への名義の書換えがいつでもできる状態になっていることを確認したら、司法書士は買主に支払いをしてもいいことを伝えていきます。売主にお金を支払われたことを確認した後に、司法書士は登記申請をして、名義を買主へ書き換えていく手続きを進めていきます。権利証などの書類を預かり、法務局に申請を行います。
こうすることによって、①買主は売主へお金を支払い、②売主が買主へ不動産の名義を渡すという2つの行為を同時にすることを可能にしています。司法書士は、売主が買主へ名義を渡すという責任を負っていくことになります。名義の書換えがうまくいかなかった場合、買主はお金を払ったのに、不動産を得られなかったという事態になってしまいます。司法書士の責任は重大なのです。逆に、司法書士がいなかった場合、皆さんは、不動産の売買において、支払いと引渡しの同時に行うという特約条項を履行できますでしょうか?司法書士の決済立会とはそんなお仕事なのです。
執筆 司法書士法人ファミリア
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