2024.08.20

コラム第7回「相続人申告登記って?」



 前回の記事では、令和6年4月1日よりスタートした相続登記義務化につき、法改正の経緯や最低限押さえておくべきポイントを中心にお話させていただきました。 
 法改正により、①相続開始から3年以内に相続登記を申請する義務があること、②義務に違反すれば過料の制裁があること、③この義務化は過去の相続も対象となること、という3点はしっかりご理解いただけたと思います。

 では、3年以内の登記が難しい方はどうすればよいのでしょうか。
 例えば、相続人同士で揉めて話し合いができない状態であれば、遺産分割調停や審判に移行する場合もあり、そうなれば解決までに時間がかかります。また、相続人の中に行方不明者や認知症の方が一人でもいれば協議には相当の時間を要するでしょう。
 この記事でご説明する「相続人申告登記」とは、色々なご事情により、すぐに手続きができない方に対して国が設けた救済制度です。
 以下では、①手続きの概要、②手続きに必要な書類や費用、③注意点等をお伝えしたいと思います。

①手続きの概要
 手続き自体は、とても簡単です。対象の不動産所在地を管轄する法務局に対し「相続が開始したこと」及び「自分が相続人の一人であること」を申出書に記載し提出します。これで相続登記の義務を履行したとみなされますので、過料の対象にはなりません。なお、この申出は、相続人が複数いたとしても誰の協力も得ることなく一人でできます。登記は、この申出書に基づき登記官が職権で、その申出人の住所と氏名を登記簿に記載します。

②手続きに必要な書類、費用        
 必要な書類は、申出書と被相続人の死亡がわかる戸籍、申出人が相続人であることが分かる戸籍、申出人の住民票です。相続登記を申請する際には、集める書類がかなり多いのですが、申告登記については、申出人の負担を軽くしようという意図から手続きが簡略化されております。なお、法務局に支払う手数料(登録免許税)もありません。申出方法は3つあり、窓口、郵送、オンラインでの手続きが可能です。

③注意点
 前回の記事でもお伝えしましたが、この相続人申告登記は、その後の相続登記を想定した一時的な対応でしかありません。その為、申出した相続人がその不動産を処分したりすることができない点には注意が必要です。結局は、その不動産を売却等しようと思えば相続登記をする必要があるのです。また、申出は一人でできますが、他の相続人の分につき代理してまとめて申請した場合を除き、他の相続人にまでその効力が及ぶものではありません。その他考えられるデメリットとしては、対象不動産に申出人の住所と氏名が載ることで固定資産税の請求書が申出人宛に届く可能性があります。
 以上、相続人申告登記についてご説明をさせていただきました。相続登記が義務化されたことにより、今後どのような影響が出てくるのか今はまだわかりません。

 お伝えしたいメッセージは一つです。相続登記を放置することは、自分だけでなく次の代にも大変な負担を与えます。相続人申告登記はとりあえずの一時しのぎの対応です。それだけで満足することなく、相続登記をするにはどうしたらよいか考え、早めに動くことが肝心です。相続は、次の世代への財産のバトンタッチです。引き継いだ相手が困らないようにしておくことは、引き継がせる側の思いやり、そして義務ではないでしょうか。相続について少しでも不安がある方は、是非一度専門家にお問い合わせされることをお勧めいたします。

執筆 司法書士法人ファミリア
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