2024.07.18
コラム第6回「不動産の放置は超キケン! いらない土地の手放し方」
1 相続した山林で5000万円賠償責任
2017年、熊本市の県道で走行中の車に倒れた木が直撃し、運転していた32歳の男性が死亡するという事故が起きました。男性の遺族は、熊本市と土地の所有者に対し損害賠償請求し、2022年12月、最高裁で約5000万円の支払を命ずる判決が確定しました。
民法第717条では、適切な管理を怠った結果、建物や立木等が倒れて住宅や通行人等に被害を与えた場合、その所有者は被害者に対してその損害を賠償する責任があると規定されています。ここで重要なことは、所有者として適切に管理をしていたかどうかという点です。
上記判決においても、樹木の倒木は予測可能であり適切な管理を欠いていたとして所有者としての責任を認めています。
しかし、自宅の庭など目の届く場所であれば比較的管理もしやすいですが、遠方の土地や相続した山林などの管理は容易ではありません。昨今は、台風や地震等の自然災害により建物倒壊や倒木等による被害が起こりやすく、維持管理の負担も増すばかりです。
こうしてみると、不動産所有者の責任は想像以上に重く、なんとなく土地を相続して放置しておくことは大変なリスクを伴うということを、肝に銘じておく必要があります。
2 いらない土地だけ手放したい!
管理が困難な土地を売りたいけど、売ろうにも売れない。そんないらない土地を手放す方法はあるのでしょうか。
一つ目の方法は、家庭裁判所に相続放棄の申立てをする方法です。しかし、相続放棄のデメリットは、財産の選り好みができない点です。この農地はいらないけど、この宅地と預貯金は欲しいといった選択はできません。全ての財産を放棄する必要があります。
二つ目の方法は、令和5年4月27日から開始した「相続土地国庫帰属制度」を利用し相続した土地を国に引き取ってもらう方法です。この制度は、相続放棄と違い、いらない土地のみ手放すことができる点が大きなメリットとなります。
3 相続土地国庫帰属制度って実際どうなの?
この制度を利用する場合、山林や農地も含めて引き取り対象となりますが、どんな土地でも無条件に国が引き取ってくれる訳ではありません。一定の要件をクリアしている土地のみ引き取ってもらえます。
例えば次のような土地は拒否されます。
・建物がある土地
・誰かが借りている土地
・担保が付いている土地
・残置物がある土地
・袋地
・境界が不明な土地 などなど
どうも条件が厳しく使い勝手が悪そうに思えますが、実際のところどうなのでしょうか。
この点、法務省による相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計によると、令和6年5月31日時点の審査完了数483件のうち、460件が承認され国庫に帰属となっています。つまり、9割以上が承認されているのです。まだ運用開始から1年程度で先行きは不透明ですが、専門家の間では思っていた程厳しい制度ではなく結構使える制度では?との見方も出てきています。
4 自分の代で処分する
維持管理が困難な土地を次世代に引き継がせることは、問題の先送りです。
上記制度以外にも、引き取り業者に有料で引き取ってもらう方法や、ネットで引き取り手を見つける方法、お隣さんに引き取ってもらう方法など、手放し方はいろいろあります。
次世代が安心して暮らしていけるよう、自分の代でいらない土地を手放す努力をしてみてはいかがでしょうか。
執筆 司法書士法人ファミリア
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