2024.06.14

コラム第4回「相続登記義務化ってなに?」



皆様は令和6年4月1日から相続登記が義務化となったことをご存じでしょうか。
相続登記とは、亡くなった方が所有されていた不動産を、その不動産を相続した人に名義変更する手続きのことを言います。
この相続登記、これまで手続きをするかしないかは当事者の判断に任されていました。相続のタイミングで登記してもよいし、相続した不動産を売却するタイミングでしてもOK。自由に決められたわけです。それが今回の改正で、時期はお任せではなく、「3年以内に絶対にやってくださいね!」となったわけです。

なぜ国がそこまで首をつっこんでくるの?もし義務に違反したらどうなるわけ??と思う方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、今回の法改正の経緯や最低限知っておくべきポイントや注意点を中心にお話したいと思います。

まず、法改正の経緯について簡単にお話しましょう。皆様は日本全国に誰のものか分からない土地がどのぐらいあるかご存じでしょうか。令和4年度に地方公共団体が実施した地籍調査事業では、約24%が所有者不明という調査結果が出ています。高齢化の進む日本において、何の対策も取らなければ、今後も所有者不明土地はますます増加していくでしょう。このままではマズイ。改正にはこういった背景があります。では、所有者不明の土地が増えると、何が問題かわかりますでしょうか。具体的には、土地が活用できない(売買できない)、管理がなされず放置されることで治安や景観が悪化する、公共事業や災害復旧の妨げとなる等が挙げられます。特に災害復旧の妨げは非常に深刻な問題でした。平成23年の東日本大震災、そして最近でいえば能登半島地震では、多くの建物が倒壊し大きな被害が出ました。復興を急ぐ中、仮設住宅を建設するにも、家屋を解体するにも、基本的にはその土地や建物の所有者全員の同意が必要となるため復興復旧の遅れにつながってしまったのです。以上が、今回の法改正の簡単な経緯となります。

では次に、改正の押さえるべきポイントをお話したいと思います。ポイントは大きく分けて4つあります。

①過去の相続も今回の義務化の対象
②相続開始から3年以内の登記が必要
③義務に違反すると10万円以下の過料
④3年以内に相続登記ができない場合は、「相続人申告登記制度」を利用する

まず、ポイント①についてですが、法改正前の相続も対象であることに注意してください。まずはお近くの法務局でご自宅の登記の名義人を確認してみましょう。亡くなられた方のご名義のままになっていませんか。蓋を開けてみると、実は何代にもわたって相続登記を放置していたといったケースも決して珍しくありません。この放置してきた登記手続きも今後は義務となるのです。

ポイント②は、相続登記には期限があるというところが重要です。タイムリミットは、相続の開始及び相続で不動産を取得したことを知った時から3年以内です。もし法改正前の相続であれば、令和6年4月1日から3年以内に手続きを済ませなければなりません。

ポイント③については、ペナルティです。過料なんて聞き慣れない言葉ですが、行政法規上の違反ですので、刑罰とは違います。そのため前科がつくことはありません。

最後にポイント④です。義務だ義務だと言うけれど、相続登記をするには、相続人全員での話し合い、つまり遺産分割協議が必要です。それってそんなに簡単にできるものなの?と思ってしまいますよね。何代にもわたって放置してきた不動産であれば、相続人も多数に及び、戸籍を取り寄せて相続人が誰なのかを調べるのも一苦労です。それに、苦労して相続人全員が判明したとしても、次に待ち受けるのは「で、この人誰??」状態。話し合いをするにも、どう連絡をとってよいかわからず途方に暮れるケースもあるでしょう。そうこうするうちに3年などあっという間に過ぎてしまうかもしれません。「相続人申告登記」は、そういった場合に、義務違反にならないように法務局に対し「色々事情があって相続登記ができないのだけれども、私が相続人の一人だよ!」と、申し出ることで義務違反を免れる制度です。ただ、この申し出は相続登記の代わりになるものではありません。根本的な解決にはならず、いわば一時的な対応でしかないことには注意が必要です。なお、この④については、別の記事でまた詳しくお話をしたいと考えています。

相続登記の義務化。いきなり言われても困るよと最初は思われたかもしれません。ただ、法改正の経緯を知っていただければ、その必要性をわかっていただけるのではないでしょうか。相続登記は時間が経てば経つほど複雑になります。自分の子供や孫が将来困ったことにならないように、早い段階で手続きを進めていきましょう。

執筆 司法書士法人ファミリア
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